空箱と金平糖

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鶴丸国永のはつこい【刀剣乱腐小説*つるんば】

※埋葬ネタです。死ネタですのでご注意ください。つるんばなのにほぼまんばくんが搭乗しません。

ツイッターのわんどろで書いたもの。

お題は『大切なもの』でした

鶴丸さん視点。

 

 

 

埋葬された時の話をした時、古馴染みの黒い龍の太刀はかなりわかりにくくも哀しそうに目尻を下げ、「あんたが大切だったんだろうな」と言った。
「たいせつ?」
「奪われたくない、失くしたくない。だからきっと埋めたんだろう。…あんたには多分わからん感覚だろうな」
それだけ言ってあの太刀はすぐに何処かにいってしまった。
大切なものは埋めるのか。鶴丸国永は何かを埋めてみようと思い立った。
しかし、何を埋めようか。考えようにも自分の大切なものがぱっと浮かんでこない。
ただ好きなものではだめなのだ。独占して、他の何にも見せはしないと思うようなものでなければ。
わからないまま寝て起きて、鶴丸は思いついた。戸棚から少し不格好に折られた鶴を取り出す。特がついた時にこの本丸の総隊長である布を被った打刀に貰ったものだ。
本丸の桜の木の下に穴を掘って埋めた。通りすがりの何振りかに落とし穴は大概にしろよと声をかけられた。失礼じゃないのか、今回は落とし穴じゃないんだぞと心中で呟く。
完全に埋めきって被せた土を踏む。なんだか物足りなかった。もっと大きな物を埋めなければ。
「埋めたのか、落とし穴」
落ち着いた低い声に振り向く。声でわかってはいたが、総隊長さんだった。
「実はもともと落とし穴じゃないんだぜ、これ。」
「?じゃあ、なんなんだ?」
「これはな──」

「倶利坊は何かを埋めようと思ったことはあるのか?」
「なくはない」
「埋めたか?」
「埋めるわけ無いだろう」
「何故?」
素直に疑問だったから聞いたのだが、眼前の太刀は顔を顰める。
「例えば、あんたには土の中より飛び回っている方が似合うと思う。光忠の料理がまだ全然食い足りない。だから俺はあんたらを埋めようとは思わない。埋めてしまいたいと思っても、埋めたくないという気持ちだってある。それもひっくるめて本音だと、思っている」
「驚いた。君は俺達のことそんなに好いていたのか」
「ふざけているのなら俺は部屋に戻るぞ」
本気で立ち上がりかけた太刀を茶菓子を出して宥めもう一度座らせる。
「…埋めたい奴でもできたか」
問われてすぐ、総隊長さんの顔が浮かんでくる。
「まぁ、そうだな」
「やめておけ、刀解されるぞ」
その言葉に少し笑ってしまう。どこまでも俺のことを心配してくれているらしい。
けど、その忠告は既に遅い。
あの桜の木の下には、既に折鶴と共に割れた鋼が埋まっている。
気付かれて刀解される前に、俺も早く埋まって来なくては。欲をいえば俺も総隊長さんに埋めて欲しかったところだが、折れた刀が己を埋めてくれるなど不可能だ。

桜の木の上にわかりやすく土の入った籠がある。罠だろうとすぐにわかるそれに近付く刀剣はいない。だから空いたままの穴にある山姥切国広“だったもの”に気づいた者もいない。
折鶴と刀の残骸の入った穴に自分も入り、木の上から伸びている紐を引く。
籠から土がどさどさと降ってくる。
恋していた刀の残骸を抱いて、
鶴丸国永は再び生き埋めになる。