空箱と金平糖

創作や二次創作、ゲームの話やマンガの話を投下しておく倉庫です。少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

鶴丸国永のはつこい【刀剣乱腐小説*つるんば】

※埋葬ネタです。死ネタですのでご注意ください。つるんばなのにほぼまんばくんが搭乗しません。

ツイッターのわんどろで書いたもの。

お題は『大切なもの』でした

鶴丸さん視点。

 

 

 

埋葬された時の話をした時、古馴染みの黒い龍の太刀はかなりわかりにくくも哀しそうに目尻を下げ、「あんたが大切だったんだろうな」と言った。
「たいせつ?」
「奪われたくない、失くしたくない。だからきっと埋めたんだろう。…あんたには多分わからん感覚だろうな」
それだけ言ってあの太刀はすぐに何処かにいってしまった。
大切なものは埋めるのか。鶴丸国永は何かを埋めてみようと思い立った。
しかし、何を埋めようか。考えようにも自分の大切なものがぱっと浮かんでこない。
ただ好きなものではだめなのだ。独占して、他の何にも見せはしないと思うようなものでなければ。
わからないまま寝て起きて、鶴丸は思いついた。戸棚から少し不格好に折られた鶴を取り出す。特がついた時にこの本丸の総隊長である布を被った打刀に貰ったものだ。
本丸の桜の木の下に穴を掘って埋めた。通りすがりの何振りかに落とし穴は大概にしろよと声をかけられた。失礼じゃないのか、今回は落とし穴じゃないんだぞと心中で呟く。
完全に埋めきって被せた土を踏む。なんだか物足りなかった。もっと大きな物を埋めなければ。
「埋めたのか、落とし穴」
落ち着いた低い声に振り向く。声でわかってはいたが、総隊長さんだった。
「実はもともと落とし穴じゃないんだぜ、これ。」
「?じゃあ、なんなんだ?」
「これはな──」

「倶利坊は何かを埋めようと思ったことはあるのか?」
「なくはない」
「埋めたか?」
「埋めるわけ無いだろう」
「何故?」
素直に疑問だったから聞いたのだが、眼前の太刀は顔を顰める。
「例えば、あんたには土の中より飛び回っている方が似合うと思う。光忠の料理がまだ全然食い足りない。だから俺はあんたらを埋めようとは思わない。埋めてしまいたいと思っても、埋めたくないという気持ちだってある。それもひっくるめて本音だと、思っている」
「驚いた。君は俺達のことそんなに好いていたのか」
「ふざけているのなら俺は部屋に戻るぞ」
本気で立ち上がりかけた太刀を茶菓子を出して宥めもう一度座らせる。
「…埋めたい奴でもできたか」
問われてすぐ、総隊長さんの顔が浮かんでくる。
「まぁ、そうだな」
「やめておけ、刀解されるぞ」
その言葉に少し笑ってしまう。どこまでも俺のことを心配してくれているらしい。
けど、その忠告は既に遅い。
あの桜の木の下には、既に折鶴と共に割れた鋼が埋まっている。
気付かれて刀解される前に、俺も早く埋まって来なくては。欲をいえば俺も総隊長さんに埋めて欲しかったところだが、折れた刀が己を埋めてくれるなど不可能だ。

桜の木の上にわかりやすく土の入った籠がある。罠だろうとすぐにわかるそれに近付く刀剣はいない。だから空いたままの穴にある山姥切国広“だったもの”に気づいた者もいない。
折鶴と刀の残骸の入った穴に自分も入り、木の上から伸びている紐を引く。
籠から土がどさどさと降ってくる。
恋していた刀の残骸を抱いて、
鶴丸国永は再び生き埋めになる。

とうらぶゲーム日記♯4

前回から大分間が空いてしまいましたね…

まずは、篭手切くん無事捕獲しました!!

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今回のイベントで65レベルほどだった江雪さんが96レベルになったんですよ笑

これで脇差極前コンプ!

 

それから、五虎退ちゃんが修行から帰ってきました。

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虎が大きい!!!!

五虎退ちゃんは絵柄が大変好みなのもあって極姿も超好きです。

 

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あとは、亀甲くんきてくれました!

極前打刀コンプですね!!

 

それから、習合が実装されましたね!!

鶴丸さんとか習合前に連結してしまって最近は来ていないのでうあ〜〜ってなってます...

いち兄なんて絶対10振は来てるのに...

うちの本丸ではまだレベル5まで行った子はいませんが、まったりとやっていきます。

誰が一番最初かなー?

と、最後にこれです。

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誰!???まんばちゃん!???

Twitterでも闇堕ち派とか布の妖精派とか山姥切長義さん派とかに予想が分かれていました!

新イベ楽しみすぎる...!!!

とうらぶゲーム日記#3

こんにちは!

皆さんイベントは進んでいますか?

私は今玉71513個!あと少しです😀

 

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さらに、五振の近侍曲を獲得しました!琴があとひとつ手に入ったら物吉くんの曲をとろうと思います。

 

それから、今までいなかった不動くんが我が本丸にやってきました!

 

修行にだした堀川くんも帰ってきたので(スクショできませんでした…)

今は小夜ちゃんを修行にだしています!

帰ってくるのが楽しみ!!

とうらぶゲーム日記♯2

しばらく間が空いてしまいました。イベントが進まなくて...

玉80000個で篭手切くんがもらえるんですがまだ50000個ぐらいなので、まだまだ引き続き頑張ります。

 

そのイベントでですが、まんばくん、、鶴さん、へしべ、堀川くんの近侍曲を無事にとることができました!!

 


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鈴がもう一つきたらいち兄の曲をとろうと思っています。

 

それから、

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薬研ニキと兼さんが修行から帰ってきました!!

今は堀川くんを修行にだしています。

この2人なのですが、薬研ニキの手紙は織田さんについてで、すごく興味深い感じの話でした!兼さんのほうは、さすが活撃の主人公!って感じで主人公してました。頭良かった。兼さんの二枚目の手紙のラストが大変可愛いのでオススメです。

 

さらに嬉しい報告なのですが、明石国行をお迎えしました!!

イベント中なのでまだレベル1のままなのですが、来派の2人と部隊に入れられるようにしたいです。愛染くんあんまりレベル上がってないので一緒にかなぁ。

 

 

山姥切国広A〜C

山姥切国広A

 

修行から帰ってきた。布をとった俺を見て主は「やっぱりかぁ」と言って笑っていた。

「山姥切、おかえりなさい。」

 

 

俺は主の初期刀ではなかったが、本丸で三番目にきた刀だった。

周りと関わろうとしない俺に主は根気よく話しかけた。構わないでくれと何度言ったことだろう、主は意外にも強情で、決めたことは曲げないタイプらしかった。

呼び方に関してもそうで、俺は山姥切と呼ばれるのがあまり好きではない。いつか山姥切本科が実装されたらどうするのだ、それに山姥切というのは本科の名前であって俺の名前ではないように思うからだ。

演練で会う他の本丸の俺も、大抵は切国、国広、まんばというような呼ばれ方をしていた。

「でも国広はみんなついてるから苗字みたいなものでしょ?貴方の名前は山姥切だよ」

そういっても主は聞かなかったし俺は慣れた。山姥切が自分の名前だと思うようになった。この人がそう呼ぶのならそうなのだろうと根拠のない自信のようなものがあった。

変わるのは本当に簡単だ。

修行に出てたった4日。周りの人に話を聞いただけつかえていたものが胸につっかえていたものがするすると解けていった。こんなに簡単でいいのかよと過去の自分に言いたくなるくらいだった。

早く帰ろう。主が待つ本丸に。

きっと俺が帰る時間に合わせて玄関で待機しているだろうから。兄弟やみんなもいてくれたらもっと良い。

そうだ、団子を買って帰ろうか。もう燭台切がおやつまで作ってしまっているだろうか。

幸せな想像をして足早に帰る。本丸が見えたらもう足が勝手に走りだして、玄関の扉を開いていた。

 

五組の演練相手のうちに極めた山姥切国広はいなく、他の本丸の刀に物珍しいという視線をむけられた。それでも前ほど視線が気にならなくなっていることに気がついて自分で少し驚いた。視線を彷徨わせていると、まだ布を被ったままの他の本丸の山姥切国広同士がこちらを見ながらなにやら会話しているらしい姿が目に留まった。片方の山姥切国広が何かを言うと、もう片方の山姥切国広はふっとこちらから視線を逸らして、自分たちの本丸の輪に戻ったようだった。

見ていることが俺に気付かれたから逃げたのだろうか。しかしそんな表情ではなかった。

まるで、悲しいことを思い出したみたいに。何かを言っていた方の山姥切国広も、自分の中の苦しさを抑えこむように。

 

演練の結果はあまり芳しくなかった。

極になり35レベルに戻った俺はだいぶ機動も打撃もなにもかも落ちていたのだ。4日も休んだこともある、当然だろう。

主は「帰ったらたくさん連結だね」と笑っていた。

笑っていたから、俺も笑った。

 

 

 

 

 

山姥切国広B

 

修行に行くのが楽しみだったはずだった。

演練相手の中に極になった俺を見つけた。

その時俺は怖くなった。布をとって写しであることを気にしなくなる未来の自分が怖かった。

「未来の俺に今の俺が殺されるみたいだ」

うっかり呟いてしまった言葉に、同じく演練相手のうちのどこかの極前の山姥切国広が反応した「あんたもそう思うんだな」そういった彼は目を伏せて、気まずそうに自分の本丸の仲間のところへ戻っていった。

 

「修行に行きたくなったら言ってね」

主に修行道具を渡されそう言われる。そんな日が来ることはあるだろうか。

自分はこのままこの道具を押入れにしまい込んで、もう二度と見ることは無いような気がした。

思ったとおり、俺は修行を申し込むことのないまま季節が変わっていた。

 

修行に行った大倶利伽羅が帰ってきた。これで俺以外の、この本丸にいる短刀、脇差、打刀は皆極めたということになる。

短刀や脇差達は敵の攻撃を防ぐ技を習得して進化したし、打刀は仲の良い刀を守ることができるようになって満足そうだった。みんな強くなっている。俺を除いて。

仕方ないことだ、俺は写しだから。

──写しだから。

この言い訳がなくなったら、自分がダメになってしまった時なにを理由に自分を許せるだろうかと。

「…ごめ…な…さい」

怖がって修行に出ようとしない俺を急かすようなことは一度も言わなかった主。

あんたの刀としてふさわしい自分になりたいと思うのに、それと同じだけ失望されることが怖くて仕方ない。写しであることが関係ないのなら、どうして俺はこんなに身勝手で最低なのだろう。

「行きたくない」と言ったなら、主はきっと「行かなくても良い」と言うだろう。

主が俺を許すのは何故だろう。噛みしめるように名を呼ぶのはなぜだろう。がんばったら頭を撫でて褒めてくるのは何故だろう。どう思って何をしても構わないというのは何故だろう。

 

山姥切国広は変わることができない。

それでも主が許してくる間だけ。

 

 

 

山姥切国広C

 

主が俺のことをものすごく好いていることは知っている。‘推し’というものらしく、初期刀の俺にあるものをとにかく与え、保護していた。廊下を歩けばお菓子をもらう。出陣するなら特上の盾兵2つとお守り極、両サイドに大太刀がセットだ。俺が何かを言えばそれだけで嬉しそうに微笑む。

主が写しであることを拗らせた特別自分を好いていることは知っていた。

 

演練で山姥切国広と極めた山姥切国広に会った。隣りに立っていた山姥切国広は、未来の自分に殺されるようだと極めた山姥切国広を見て言った。きっと主もそう思っている。

 

そう確信あったから、主が修行をしたいと言い出した俺に反対しなかったのは拍子抜けもいいところだった。

「まんばちゃんのしたいことなら、なんでも叶えあげたいと思ってるから」

ということらしい。それが主の強がりのようなものであることもわかっていたが、それでも許してくれたのだからと感謝して修行に出かけた。

 

 

修行から帰ったら、まず真っ先に主に抱きつかれて泣かれた。俺が修行中の4日間代わりに近侍だった鶴丸が「4日いなかったくらいで寂しがりすぎだろ」とツッコんでいる。

「主は抑えておくから他のみんなに挨拶でもしてきたらどうだ?」

さらに鶴丸の提案で俺は主の部屋を出た。

たんたんたんと久しぶりの床の感覚を味わう。

たんたんたんたんたんたんたん、徐々にスピードを上げていき、もうほぼスライディングするような形で自室に倒れこんだ。

主は平気ではなかった。帰還した俺の、布の取れた頭を見て、主はひどく哀しげな表情をした。あの表情はよく知っている。慣れている。床に倒れこんだまま動かずに静かに涙を流す。

あの時、主は確かに失望したのだ。

 

「ちゃんと話しあえ」と鶴丸に主と一緒に空き部屋に放り込まれた。修行から戻ってから俺は近侍をやっていなかった。近侍は行動の自由の制限にもなり得るから、代わりにしばらく近侍をした鶴丸は仕事に飽きてしまったのだろう。

 

部屋に入っても、主は俺を見なかった。

だからもういいと思った。

床に膝をついて手もつける。頭を下げたら完全に土下座の体制である。

「もう、刀解してくれ」

このままいてもきっとなんの意味もない。

「嫌だ」

「頼む」

「やだってば!」

びくりとして顔をあげれば、ようやくこちらを見た主と目があった。

「ごめんね」

主は泣いていた。

「何が」

「泣かせてごめん」

ようやく自分もまた泣いていたことに気がついた。

「別人みたいで怖かった。4日の修行で変わったら、まるでこの本丸はまんばちゃんにとって価値がなくて、変えられるのは私たちじゃなかったのかなって思ったらむかついて、喜んであげられない最低な自分が一番嫌で、山伏さんに相談したら修行あるのみって言われて筋トレしたけど全然ダメで、笑って『おかえり』も言えなかった」

主はもう泣きやんでいてこちらから目を離さない。

「ばかだよね、こうやって目を合わせるだけで、まんばちゃんの大好きな所は何にも変わってないってすぐわかったはずなのに」

確かに変わっていなかった。以前も今も、俺は主の刀だったから。

「おかえりなさい、まんばちゃん」

主はまだうまく笑えていなかった。

それでも良いと思った。

あんたが俺の主で、俺はあんたの刀だから。

あんたがあんたの刀を大好きなことを、俺はよく知っている。

序章【刀剣乱腐小説*つるんば】

 

※現パロ注意。

 

現パロ大好き人間です。

作家鶴さんと画家まんばくん
視点ころっころ変わるので注意。
✱←このマークで始まったらまんばくん視点
□←このマークで始まったら鶴さん視点です。

続く…かもしれない

 

 


「正直、お前が絵本作家になるとは思わなかった。」
唐突に目の前の男にそんなことを言われる。先ほどの発言は作家の自分の担当である長谷部という男だ。
「そうかい?俺は創作向きの性格をしていると思うがな」
自分、五条国永の好きなことといえば、もちろんまずは新鮮な驚き。新しいものも好きだが、昔のダイヤル式の黒電話なんかにも心が踊る。花瓶に生けられた花よりは雪から顔をだした蕗の薹が好ましい。漫画のページをめくる緊張感や小説の想像させるような誠実な文面も大変気に入っているが、高校生で改めて絵本を読んだ時に感じた胸がじんわりとなるあの感覚には及ばない。
五条国永は絵本を愛していた。
一応は文と共に絵も自分で作ろうと考えていたのだが、五条が絵本の良さに気がついたのは高校二年生、16歳の時だった。それから六年たって、22歳。一昨年絵本作家としてデビューしたばかりだ。一朝一夕で絵なんぞ覚えられるわけがなく、完成した文章を前に自分の画力の上達を待つことなどできなかった。
だから絵を描いくれる人を出版社のほうで用意し、売り上げを絵かきさんと分割するような形でかいている。それでもまだこれだけで生活できるくらいには、五条の本は売れていると言ってよかった。
しかし、五条国永はこれまで六冊、半年に一つのペースで絵本を出版してきたが、そのすべての絵本で、絵を描く人間を変えさせていた。相手や長谷部には「同じ絵柄じゃ驚きが足りんだろう」と説明して納得させたが、実のところをいうと単純に「違う」と思うからだ。絵のついた出来上がった絵本を見せられると、どうしても何か違っていて、もちろんとても上手くて文句なんかないのだが、それは俺が高校生の時に絵本を読み、なんだか読むにもキラキラと眩しくて、その絵本を抱えているだけで誇らしい気持ちになるような高揚感ではなかったのだ。
「創作向きは創作向きだが。どちらかといえば絵を描く方が得意そうなイメージだ。」
「それこそ俺には才能がないぜ?」
「あぁ、不思議だ。」
長谷部は高校時代の、というか中学校からの付き合いだからそう思うのだろう。もともと五条は暇でなければ漫画や小説だって読まないタイプだった。
「むしろこれから会う絵師さんの方が、文章を書きそうなイメージだしな」
「お、もしかして俺がこの間プロットを送ったやつのかい?」
「そうだ。もう伝えたがあのプロットは良かった。珍しくバッドエンドなんだな。」
「どらまちっくだったろ?一応俺の思い出話が元になってるんだぜ?」
けらけらと笑いながら言うと、長谷部はげんなりとした顔で口を開いた。
「その話は何度も聞いた。とある展示会場で会った少年の話だろ?“鶴丸国永”とかいうペンネームもその展示の刀だそうだな。」
もうずっと前のことなのに、少年の声は未だ焦ることなく焼き付いている。
──『あんたに似て、白く美しい刀だ』
深くかぶられたフードに隠された透けるような金色の髪。そのさらに奥の碧色に、たった一瞬で五条は射止められた。
だからこんどの絵本だけは、納得できる出来栄えになると良いのだが。


ほぼ雑談でしかなかった打ち合わせは、長谷部がこれから例の絵師さんとの打ち合わせということで帰らされた。俺も会ってみたいと言ったのだが、「あまり他人と関わるのが得意でない人なんだ。つまりお前とは相性が悪い。」
ととり合ってもらえなかった。
仕方がないから、長谷部のいつもの椅子に少し仕掛けをしておとなしく帰ることにした。
エレベーターを降りたところで、勢い良く人とぶつかってしまった。こういう時はいつも体の細い自分のほうが倒れてしまう。転び慣れているから痛くもないし構わない。ぶつかった相手は倒れはしなかったが、持っていたファイルからばらばらと紙が床に散らばってしまっていた。すでに自分が転んで床に近しいのを利用して彼の落とした紙を拾っていく。
すぐ上の方から「...っすまない」という謝罪が聞こえてきて、すぐその人も紙を拾いはじめる。けれど五条の耳や目には全くその情報は届かなかった。拾い上げた紙にくぎ付けになる。
その紙たちに描かれていた絵は、まさに自分の理想だった。高校時代に絵本に感動したのと全く同じ感覚がふつふつと湧き上がってくるのを感じる。
ぶつかった相手は完全に残りの紙を拾いあげて、「えっと、大丈夫ですか?」
その声で我に変える。相手は青年のようで、フードを深く被っていて顔はわからないが、芯のある良い声をしていた。
その声になんだか聞き覚えがあるような気がしたが、なんだったかよくわからない。
それに、そんなことよりも。
「君、俺の絵本の絵を描いてくれないか?」
言った瞬間、彼は小さくたじろいだ。
「普通作家がもらえる分の売りあげも全部君にやったっていい!次の作品だけでも、どうか君に描いてほしい」
その返答はもらえなかった。俺の背後のエレベーターから、担当の長谷部が現れたからだ。
「来るのが遅いから来てみたが、五条に絡まれてたのか。」
「もともと遅れそうで急いでいたらこの人とぶつかってしまったんだ。だから五条、さん?は悪くない」
五条は二人の間に立ち、なんとなく話を聞いていた。...って
「長谷部!君、少しばかり前にこの後俺の絵本の絵師さんと打ち合わせだって言ったよな!」
「言ったが?」
五条国永は未だかつてない勢いで担当に詰め寄る。それに少しもびびったりしないあたり、長谷部という男もなかなか肝が据わっている。
「今の話の流れだと、君はいまからそこの彼と打ち合わせなんだな!?」
「そうだ。だからはやく帰れ」
長谷部が完全に言い切る前に、五条はがばっと後ろを振り返り、そこにいた出会ったばかりの男に抱きついた。もはやタックルのような勢いだつたが。
抱きつかれた相手は突然のことに驚いた様子で口をぱくぱくとさせている。
「...ありがとう。俺の絵本を完成させてくれるのが君で、俺は本当に嬉しい。」
「困ってるだろうが」
長谷部にべりっと引き剥がされる。かなり乱暴だったが、五条国永はずっと笑っていた。だれも見たこともないほど表情を緩ませて、ものすごく小さな声で呟く。
「...これで、あの子のことを忘れられる」

「にしても、まんばまで同じ美大だったとはねぇ。しかも絵って。」
「俺なんかに絵が描けるわけがないという意味か?」
山姥国広は手元のノートから目を離さずに答える。話しかけてきたのは高校からの知り合いの加州清光。彼は思っていたより面倒見が良いらしく、高校に入学したての頃から国広の世話を焼いてくれている。
「違うって。単に意外だったの。俺にそんな話したことないよね?」
「進路について聞いてこなかっただろ」
「そうだけどさー、卒業式に絶対連絡しろよって念押ししたあれはなんだったの…」
それに関しては国広は加州の進路を聞いていたので どうせ会うのに何いつてるんだろう とは思っていた。
「でもそういえば高校の選択も美術だったね。従兄弟の二人が書道だったから書道だろうと思ってたから、あれも意外だった」
「どうせ兄弟達とは違う学年だしな。」
兄弟達というのは国広の従兄弟二人のことである。小さい頃から国広の面倒を見てきたことや、その過保護っぷりから、もう国広は「兄弟」と呼ぶにまで至っている。
「まぁあんまり喋んないまんばだからこそ絵で表現してるって思えば違和感はないかも?」
「違う」
「じゃあ何で?何で絵なの?」
加州は一度気になるととことん気になるらしい。そんな加州も絵を描くをということは俺は前から知っている。旅行先で似顔絵屋をみかけて、絵を描いてもらった人の笑顔に心を奪われた。そんな理由はいかにも優しい加州らしい。
だからそんな眩しい動機で絵を描く加州に自分の絵を描く理由を語りたくなかった。それがいまの今まで加州が俺が絵を描く理由を知らない事情だ。だがここまできたら話す他ないだろう。自分の不純な動機を。
国広はかばんから一冊の絵本を取り出す。
「絵本持ち歩いてんの!?」
「この本だけだ」
つまり持ち歩いておるのではないか、というセリフを加州は飲み込んだ。
それに全く気付かずに国広は語り始める。
「この人の書く文に、俺が絵を付けたい」
それだけで、ずっとこっそり絵の練習を重ねてきた。

──『かたなのかみさま』
── 文︰鶴丸国永

加州は絵本を読んで納得してくれた。
「ふーん。確かに面白いね。好きな作家の絵本を描きたいってことかぁ。」
本当はそうではなく、作者名を見て会いたくなったりしただけなのだが。
「あぁ。それで、描くことになった。」
「へー……は?」
加州は絵本からがばっと顔をあげた。目が合う。
「ほら、絵本の最後のページを見ろ」
言うとおりに加州は最後のページを開く。
そこに書かれてあるのはたしかに絵師募集の要項だった。封筒に住所や連絡先、ペンネームなどを書いて、中に彼の絵本の登場キャラの絵を好きなように描いた紙を入れ、その封筒をページにのっている会社の住所に送ると、彼の担当さんが見て、選んでくれるというものだ。
「それで送って、選ばれたの?」
「ああ。昨日担当さんに会ってきた。」
そう言うと加州は脚をぶんぶんと振りながら言う。「いーなーもう仕事できるって。」
「加州は今コンペに作品を出品してるんだったか?」
「そうなの!今度こそ賞とれるかな〜」
そんな話をしていたが、加州が「俺この後の講義とってるんだ。そろそろ行ってくるね」と退室した。国広はもう今日の講義はない。机の上の絵本やノート、筆記用具をかばんにしまい、家に帰ることにした。

しかし国広の足は校門の少し前でぴたりと止まった。校門に背中を預けて立っていた白い男は、国広を見つけて手を振ってくる。
鶴丸国永が学校に押しかけてきた。

突然押しかけた上に、一度出会っただけの男だ。もう忘れられているかと思ったが、そんなこともないらしい。彼は俺を視界に入れると、すぐにぴたりとその場で止まってしまった。
そこで待つのも自分らしくないだろう。五条はじりじりと彼の方へ歩いて行く。見る人が見れば、警戒心の強い猫を手懐けようとする人間に誓い図だったかもしれない。
気付けば彼をもう学校の壁まで追い詰めていた。流石に不審者っぽいな。
無言でかすかにたじろいだ彼はずっと地面を眺めている。
下から覗きこむように屈んで、彼の両手をしっかりと掴む。
「この後一緒にお茶でもどうだい?」
俺としたことが誘い文句を考えてくるのを忘れていた。これじゃ悪質なナンパみたいだ。
「わかり、ました」
頭上から戸惑ったような声が聞こえる。そりゃそうだよな、うん。
乞うように少し上を見上げると、揺れる碧色と目が合う。その瞬間、心臓がぐんと跳ね上がった。
一番大事な記憶の一部と、その瞳がぴたりと重なる。忘れることがなかった眼差しの強さがそこにあった。
知ってる。知ってる。この色を、この青年を。
ひゅっと力が抜けて、俺はその場に座り込んだ。
「大丈夫ですか?」
前回会ったときもたしかこう言われた。
彼にとって不審者でしかないはずの自分を心から心配するような声音で。
「はははっ」
笑い出した五条に彼はさらに眉間の皺を深くした。
「そういや、まだ君の名前も知らないんだよなぁ」
「山姥国広だ。鶴丸国永。」
「山姥?珍しい苗字だな。あと鶴丸ペンネームだ。俺は五条国永という。」
もうずっと前に博物館で一度だけ出会った青年。その時のエピソードを多少着色したような物語を完成させて、そうしたらその青年のことを諦めるつもりだった。
それなのに、見つけてしまった。こんな形で。
「そうか、…じゃなくて、そうですか」
目の前の彼は俺のことを覚えているのだろうか。別に覚えていなくたって構わない。諦める理由がなくなった。
もうお互いに子供じゃない。何も知らないままじゃない、何も知らないままではいられなくなった。
だからもっと知りたい。その声で教えてほしい。俺のことも知ってほしい。
彼と一緒にあの特別な物語を完成させたい。
そうしたら、あの物語はバットエンドではなくなるのかもしれないから。

 

 

 

【設定】

五条国永
刀剣乱舞でいうところの鶴丸国永。
文字オンリーの絵本作家。担当はへしべ。
高校二年の夏休み、読書感想文という宿題の存在を忘れていて、急いで書き上げるために短い絵本の 百万回生○た猫 を読んで号泣。以来絵本にはまり作家にまでなった。
昔博物館の刀の展示で国広と一度出会っており、それが初恋。ペンネームの鶴丸国永はその時国広に自分に似ていると言われた刀から。
しかし国広がすぐ引っ越ししたこともありそれ以来再会することもなく、初恋のエピソードを絵本にして吹っ切れようと思っていた。
しかし最近再会を果たしたため、これからアタックが始まる。

○山姥国広
刀剣乱舞でいうところの山姥切国広
美大生。清光とは長い付き合い
高校までずっと親の事情での転校が多く引っ越しばかりしていて、人との関わりを避けていた。
博物館の刀の展示で五条に会い、転校のことを話すと「それいいな!沢山の人と関われるチャンスだろ?きっと君はこれからたくさんの君を大事にしてくれる人と出会って、沢山の幸せをもらって、君も沢山の幸せを与えていくだろう」と予言めいたことを言われ、もし再会することがあれば 出会った人たちの話を五条に語り聞かせるという約束をした。
それを覚えていて、五条に似ている刀、鶴丸国永というペンネームの作家の絵本を見かけ、絵の道を目指す。もともと絵は趣味だった。
わざわざ五条と会った町の美術大学に入学。態度には出ていないが、最近五条と再会できたことを密かに喜んでいる。

マジカルデイズ絵まとめ

ついったにあげてた絵まとめです。

シアンちゃん推しなのでシアンちゃん多め

 

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ニコくん誕生日絵
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これだけジクシアっぽいのでご注意です


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シキミさん誕生日絵

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以下はスオアキ漫画なのでご注意!

 


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